【イオングループ】ビオセボン・ジャポンがコロナ禍でも好調なワケ

話題のニュースを「コンプリメント効果とシナジー効果」から読み解く

2021年7月3日付けの日経MJのオンライン記事で、イオン傘下のビオセボン・ジャポンを取り上げていました。ビオセボンは、フランス発祥で欧州で100店舗以上を展開していたオーガニック商品を専門に取り扱うスーパーマーケットとのこと。フランス本体は、カルフールに買収されましたが、日本ではイオングループとしてビオセボン・ジャポンとして、業況を拡大しています。

直近までにリアル店舗を26店舗展開しており、新たにビオセボンオンラインストアを立ち上げ、オーガニック商品を2000品目以上取り扱っています。

記事によると、ビオセボン・ジャポンの売上は、新型コロナウィルス感染症拡大下においても、順調に推移しているそうです。このビオセボン・ジャポンの躍進は、オーガニック商品の取り扱いを強化しているイオングループの商品戦略にも影響を与えそうだと指摘しています。

さて、イオングループにとって、このビオセボン・ジャポンの好調をどのように活用できるでしょうか?

今回は、コンプリメント効果(相補効果)とシナジー効果(相乗効果)を対比させながら、検討してみたいと思います。

コンプリメント効果(相補効果)とは、複数の事業を組み合わせることで、各製品の市場分野で需要の変動や資源の制約に対応し、需要変動の平準化や余剰資源の有効利用に結びつけようとする効果です。複数の製品分野での事業が、互いに足りない部分を補完しあうことで、企業全体として売上の季節変動などを一定に保つことなどが、具体例としてあげられます。足し合わせることで、お互いの不足部分を補完するため、足し算的効果ともいわれます。

シナジー効果(相乗効果)とは、複数の事業を組み合わせた際に、情報資源を同時多重利用することによって発生する効果です。複数の事業が相互に資産を生み出しあい、使いあうことによって、相互依存的に売上高が高まるという効果です。同時多重利用という点で、足し合わせよりも掛け合わせという要素が強く、掛け算的効果ともいわれます。

例えば、仮にイオンがビオセボン・ジャポンの商品を展開してオーガニック需要に対応する。一方で、ビオセボンがトップバリューの中でもオーガニック系の商品を展開して、バリエーションを増やしていくという方針をとるならば、これはコンプリメント効果でしょう。

一方で、イオンがビオセボン・ジャポンを前面に押し出すようなフロアをつくり、日本ではまだ誰でも知る存在とまではいえないビオセボン・ジャポンの存在をアピールし認知度を高めていく。一方で、ビオセボン・ジャポンがトップバリューの商品を監修するなど、オーガニックというイメージをイオン全体に波及させ、グループ全体のイメージアップを図る方針をとるならば、これはシナジー効果になるのではないでしょうか。

後者では、ビオセボン・ジャポンの認知度が高まれば高まるほど、イオンのイメージ向上が図られ、イオンのイメージ向上によって客数が増えれば増えるほど、ビオセボン・ジャポンの認知も更に高まるという、掛け算の効果が期待できます。

前述のケースはあくまでも一例ですが、現在はイオン系の商業施設とは独立する形で展開しているビオセボン店舗。今後、どのようなシナジー効果を設計するか、否応なく注目が集まります。

筆者も経営戦略の視点から動向を追いかけていきたいと思います。

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岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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