【経営戦略を事例で解説】百貨店が旅行業界をライバルと考えた理由

ミクロ環境の情報収集

あなたはどんな業界で仕事をしていますか?
ミクロ環境の情報収集ができるようになると、業界における新規参入や代替品となり得る商品などが見えてきます。
もし、競合他社に先手を打たれてしまった場合、どのような対抗策が打ち出せるかのヒントにもなります。
では早速、事例を通して解説していきます。

今回のテーマはミクロ環境の情報収集です。
例として、百貨店の事例を用いて説明していきます。
百貨店というのは、1990年代初頭までは好調で、売り上げも右肩上がりでした。ところが1990年代半ばから、売上が減少に転じることになります。
もちろん当時から、ダイエーやイオンに代表される「GMS」と呼ばれる業態とライバル関係にありました。

百貨店にとっての脅威は旅行業界

GMSとは、大型のスーパーマーケットと捉えていただければ結構です。2000年代に入ってからは、ららぽーとやイオンモールなどのショッピングセンターが台頭し、さらに苦境に立たされることになります。
しかし百貨店業界にとって、ショッピングセンターも確かに脅威ではありましたが、それと同じぐらい、むしろそれ以上に旅行業界に脅威を感じていたと言われています。
ではなぜ百貨店は、旅行業界をライバルと考えたのでしょうか?

マイケルポーターの戦略論:5つの切り口

その疑問を紐解く鍵が、今回のテーマのミクロ環境の情報収集にあります。
マイケル・ポーターというのは戦略論の中でも非常に著名な研究者です。ポーターは企業を取り巻く環境について5つの切り口で分けて考えています。
ポーターの5つの切り口というのは、「買い手」「売り手」「業界内競合他社」「新規参入」「代替品」です。
百貨店で例えると、下記になります。

買い手・・・お客さま
売り手・・・テナント/卸売業者
業界内競合他社・・・百貨店業界のライバル他社
新規参入・・・ショッピングセンター
代替品・・・旅行業界

ミクロ環境、つまり、企業を取り巻く外部環境の中で、より近い環境は「業界内競合他社」あるいは「買い手」「売り手」だけではなく、「新規参入」の企業や「代替品」を提供する企業も脅威としてしっかりと意識する必要があります。

百貨店を利用する本質的な顧客ニーズは「家族で楽しむ時間と場所」

百貨店が旅行業界をライバル視した理由。それは紛れもなくミクロ環境として業界内の競合他社や新規参入の企業だけではなくて、代替品を提供する企業も脅威として考えたからだと言えます。
ちなみに百貨店が当時提供していたのは、商品や販売員による接客です。ただこれは”Wants”ですね。表層的な欲求を満たすものに過ぎません。
では、それによって提供していた本質的な欲求。つまり顧客ニーズというのは何か。それは家族で楽しむ時間と場所でした。

本質的なニーズの提供こそが百貨店の強み

いまは少し違うかもしれませんが、実は1970年代、80年代の百貨店というのは、お母さん、お父さん、子供みんなで来る場所でした。
お母さんは、日頃家事などで大変ですよね。そのストレスを発散するために、百貨店で色んなフロアを買い物して回ります。お母さんの買い物は長くなりがちです。そうすると、買い物に興味のないお父さんや子どもは退屈してしまいます。
ですが、当時の百貨店の屋上には遊園地があったので、お父さんは子供を連れて一緒に遊園地で遊ぶなどして時間を潰してたわけです。
お母さんも買い物が終わり、お父さんと子供も遊園地で遊び終わりました。そうすると夕飯ですね。百貨店には大きな食堂がありましたから、そこで一緒にご飯を食べて帰る。この家族で楽しむ時間と場所の提供、本質的なニーズの提供こそが百貨店の強みでした。

デフレで旅行業界が百貨店の脅威に

ところが、2000年代に入り、代替品の脅威が現れます。
それが旅行業界でした。
なぜかと言うと、デフレが進行したからです。デフレというのは物価の低下ですよね。旅行業界のツアーも一緒です。アジアなどへの旅行というのが、どんどん安くなっていきました。下手したら、百貨店で1日買い物して使うお金よりも安い金額か、同じくらいの金額で、韓国や香港などの近場のアジア旅行を楽しめるようになったわけです。

「百貨店で買い物するより、旅行で楽しんだ方がいいよね」

そう考えるファミリー層っていうのも、出てきたのではないでしょうか。まさにそのファミリー層が増えたと想定した百貨店が、代替品の脅威として旅行業界をライバル視していたということになります。

このようにあなたが勤める会社や事務所の業界における、新規参入や代替品となり得る企業や商品を考えてみてください。
さらに対抗策として、どういう手が打てるのかというところまで、自分なりで結構ですからイメージをしてみてください。
そうすれば、自社や事務所の業界への理解がさらに深まっていくと思います。

参考文献
●『新訂 競争の戦略』M.E.ポーター著(ダイヤモンド社)
●『MBAエッセンシャルズ(第3版)』内田学編著、岩瀬敦智ほか著(東洋経済新報社)

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