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話題のニュースを「経験価値マーケティング」の視点で読み解く

2021年9月17日の日本経済新聞の記事で、「ブルーボトル、前橋市で店舗開業 コラボのスイーツも」を興味深く拝見しました。

記事によると、ブルーボトルコーヒーの日本法人が、前橋市の白井屋ホテル内にオープンしました。白井屋ホテルは、前橋市出身のジンズホールディグスの田中仁氏が旗振り役となって建設されたホテルであり、同市のランドマーク的な存在になっているそうです。

ブルーボトルコーヒーは、同社のホームページによると2002年にアメリカのサンフランシスコで、創業者のジェームス・フリーマンによって創業されました。ジェームス・フリーマンは世界中のコーヒー豆の焙煎を追求する中で、同社をオープンするに至りました。なお、日本の喫茶店にも影響を受けたそうです。

さて、今回の記事の中で紹介されているように、前橋市の同店舗は日本で24店舗目になるそうです。ただし、これまでの出店は東京や大阪を中心とした大都市に限られており、中核都市レベルの地方都市に出店するのは初めてのとのこです。

スターバックスコーヒーも最初は大都市に出店し、その後に徐々に中核都市への出店を進め、現在は全国に展開するようになったことは周知の事実です。

ブルーボトルコーヒーは、店内がゆったりとした空間になっており、ホスピタリティやサスティナビリティを大切にしています。一見するとスターバックスコーヒーと同じようなコンセプトに見えますが、果たして、ブルーボトルコーヒーも中核都市で受け入れられるのでしょうか。

今回はB.シュミットが提唱した経験価値マーケティングの観点から考察してみたいと思います。

前述のとおり一見すると、コンセプトが類似しているように見えるブルーボトルコーヒーとスターバックスコーヒーですが、それぞれのホームページや店内の様子から、相違点が見えてきます。

それはブルーボトルが拘っているお客さまに細かな注文を聞いて、そのお客さまのためにコーヒーを淹れることです。

スターバックスのミッションは、ホームページによると「人々の心を豊かで活力あるものにするためにーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」です。コーヒーに言及はあるんものの、サードプレイスという概念を提唱し、くつろげる空間を提供しているというコンセプトは有名です。

一方で、ブルーボトルのホームページによると歴史的な誓約として掲載されているのは、「焙煎したてのフレッシュなコーヒー豆だけをお客様に販売し、フレーバーが最も美味しいピーク期間に飲んでいただきたい。豆も最高品質で、最も美味しく責任をもって調達したものだけを提供する」です。空間というよりは、コーヒーそのものにフォーカスされていることが分かります。

もちろん、スターバックスもコーヒーの品質にこだわっていますし、ブルーボトルも居心地の良い空間にこだわっていると思いますが、出発点が違うことは明白です。

私見にはなりますが、スターバックスコーヒーが空間を提供しているのに対し、ブルーボトルコーヒーはコーヒーを味わうという体験を提供していると言えるのではないでしょうか。

そのように顧客に対して体験を提供するマーケティングを、経験価値マーケティングといいます。

経験価値マーケティングとは、製品やサービスに加え、付随する経験そのもの提供する考え方を指します。製品やサービスをプロモーションする際に、その特徴やベネフィットだけを伝えるのではなく、ユニークで興味を惹く深い経験と結びつける手法です。

経験は個人の意識のなかだけに存在するもののため、魅力的な経験(エクスペリエンス)を提供することができれば、ブランド・ロイヤルティを大きく高めることができるのです。

今回の記事によると、前橋市内の歴史的な建築にレンガが多く使われていることに着目し、同店の床もレンガづくりに、また、店内には前橋市内在住の芸術家、白井昌生氏による前橋市をテーマにしたアート作品を設置しています。まさに、その店舗でコーヒーを飲むという体験にフォーカスしているように見えます。

スターバックスコーヒーが、忙しいビジネスパーソンを対象にくつろげる空間を提供しているのに対し、ブルーボトルはコーヒーを楽しみたい人にコーヒーを優雅に楽しむという体験を提供していると言えるのではないでしょうか。

その点から、現時点でそのようなコンセプトを掲げるブルーボトルコーヒーの方が、スターバックスコーヒーに比べてターゲット層が狭い印象を受けます。つまり、スターバックスコーヒーのように多くの店舗が全国的に展開されることはないのではないでしょうか。

ただし、前述のとおり経験価値マーケティングがうまくいけば、ブランドに対するロイヤルティを高めることができます。コアなファンを獲得すれば、そのファンが何度もリピートしてくれることが推察できます。

前橋市のように中核都市であれば、相当数、コーヒーを魅力的な空間で楽しみたいというお客様がいると想定できます。その点から、店舗数が極端に増えなければ、中核都市でコアなファン層を獲得し、リピートを得ることで店舗が安定して収益を得ることが可能なのではないでしょうか。

前橋市の同店舗がうまくいけば、他の中核都市でもブルーボトルコーヒーを楽しめる日がやってくるかもしれません。同店の動向に注目をしていきたいと思います。

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【経営戦略を事例で解説】なぜスターバックスは質の高い接客ができるのか?
「領域の設定」の視点で考察した記事です。併せてチェックしてみてください。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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