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話題のニュースを「バウンダリー・スパンニング」から読み解く

2021年8月13日の日本経済新聞の記事、「クリエーター経済を本物に アップルCEOの10年と今後」を興味深く拝読しました。

記事によると、iPhoneなどの製品の普及台数が15億に達し、時価総額は2兆ドル超になったとのことです。また、併せてそれを支えてきた2,800万人にのぼる外部の開発者が存在する点にも触れられています。

記事の主眼は、アップルが多くの小規模で活動する開発者にビジネスチャンスをもたらした点に置かれています。そして、それがきっかけで、個人のクリエイターが活躍できる市場、「クリエイター経済」が出現したことが挙げられています。

アップルのイノベーティブな発想と日進月歩の取り組みが、クリエイターの需要を高めるとともに、進展したEC市場によって、クリエイターが潜在顧客とつながりやすくなったことが、まさにクリエイター経済を構築したといえます。

ところで、アップルの現CEOであるティム・クック氏が、開発者コミュニティを重視してきたことも同記事内で取り上げられています。

内部に技術者を抱えるのではなく、外部の開発者の力を活かすスタイルは、例えば、人件費の面で固定費を抱えずに開発機能を持つことができるという利点があります。一方で、知見が外部にも流出しやすいというデメリットも考えられます。

なぜ、アップルが外部の小さな開発者を頼りにし、クック氏がそのコミュニティを重視しているのでしょうか?

その理由の一つとして、効果的にイノベーションを起こす組織活動の一つである、バウンダリー・スパンニング(boundary spanning)が挙げられるのではないでしょうか。

組織論において、バウンダリーとは組織の内側と外側を定める境界線を意味します。ここでのスパンニングは連結するという意味合いで使われています。つまり、バウンダリー・スパンニングとは、組織の内側と外側を定める境界線をつなぐ活動(境界連結活動)のことをいいます。

ちなみに、プロダクト・イノベーションを推進するために有効なバウンダリー・スパンニングとして、下記の2つが挙げられると言われれています。

①組織内部に対してはマーケティング部門による情報収集や、研究資金の投資
②組織内部に対しては専門性の高い技術情報の収集や、外部組織との連携促進

特に②に注目すれば、クック氏の開発者コミュニティ重視の姿勢は、イノベーティブでクリエイティブな製品を生み出すための活動として理にかなっているといえます。

現在はオープンイノベーションが当たり前の時代になっていますが、アップルは当初から外部の知見を最大限に活かすための、バウンダリー・スパンニングを行ってきた。これが、同社のイノベーションの推進力を高めた一因だったのかもしれません。

多くの企業でも、このバウンダリー・スパンニングの概念を持つことによって、外部の資源を有効活用しながら、イノベーションを起こすことができるのではないでしょうか。

今後のアップル社の取り組みはもちろん、クリエーター経済の動きにも注目をしていきたいと思います。

おススメの記事はこちら↓
【Apple】新たに3つの研究分野に参入する狙いは?
「イノベーションのジレンマ」の視点で考察した記事です。併せてチェックしてみてください。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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