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話題のニュースを「新興業界の競争戦略」から読み解く

2021年7月11日付けの、日経クロストレンドの記事で、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、売上を急拡大させている企業が取り上げられていました。

その企業は、ダンボールワン。段ボール、梱包材などの通販サイトである「ダンボールワン」を運用しています。

ダンボールワンの製造面における特徴は、約100の提携工場とのネットワークと、閑散期、繁忙期を平準化した生産性の高さ。それによって、大ロットはもちろん小ロットにも対応、企業の名前やロゴを印刷したオリジナル段ボールの製造も可能。顧客ニーズに徹底的に対応できるのが特徴とのことです。

一方で、販売面の特徴は、早くから代表の辻氏が強化したwebでの発注システムです。例えば、以前であれば営業担当者が取引先に赴いて見積書を作成していましたが、Webでサイズや材質を入力すれば見積りが出る、自動見積もりシステムも早くから導入したそうです。

そのような中、記事で指摘されているとおり、BASEやSTORESなどが台頭したことによて、個人事業主が自前のブランドを立ち上げやすくなったことが追い風になりました。特に、個人は強固なブランドを持っているわけではないので、徹底的にストーリーを訴求する必要があります。記事によると、ユーザーにブランドストーリーを伝えるツールとして、梱包資材にも注力する傾向にあるとしています。この点は、実際に創業支援事業も手掛けている当社から見ても、その通りだと思います。

また、昨今のSDGsをはじめとした環境への配慮への意識向上が、さらに当社を後押ししているそうです。例えば緩衝材を使わないダンボールの設計なども、前述のとおりニーズの個別対応が可能な当社では、満たすことができるのです。

このように、もともと持っていた強みと、機会が合わさったことで、売上が急拡大したダンボールワン。しかし、既存のダンボール事業者にはダンボールワン以上の大規模企業が多い中で、なぜ、ダンボールワンが売上拡大に成功したのでしょうか?

その疑問を、今回は新興業界の競争戦略のセオリーで、読み解いてみたいと思います。

新興業界とは、技術革新や市場の需要の変化、新しい顧客ニーズの発現などによって、生じた業界を指します。

新興業界の特徴として、スタンダードなビジネスの運用方法が未確立であること、大きなリスクが存在することが挙げられます。

新興業界に先行して参入した企業は、後発の企業に対して非常に有利な位置どりが可能といわれています。先行企業ほど、自社に有利なかたちで業界内での競争のルールを作ったり、業界の構造を確立したりすることができるからです。

今回、BASEやSTORESの台頭により、個人でも手軽にブランドを立ち上げられるようになったことは、まさに顧客ニーズの発現にあたり、個人ブランドによる梱包材市場は、新興業界といえるのえはないでしょうか。

そして、ダンボールワンはもともと持っている、顧客ニーズ対応力とECリテラシーを存分に活かして、この業界にいちはやく参入したといえるでしょう。

通常の大手企業では、小ロットかつダンボールのカスタマイズ受注は、非常に手間がかかるため高額になりがちです。

しかしダンボールワンは、前述の強みからそれを低価格で対応することが可能であり、先行企業として小ロット、カスタマイズした自社オリジナルのダンボールがそれほど高くない価格でつくれるという業界構造を作り上げたといえます。

つまり、先行企業として自社に有利なかたちで、業界内のルールを確立したのです。

結果的に、後発企業が参入を尻込みするという形が出来上がったことが、ダンボールワンの快進撃の一因となっているのではないでしょうか。

もちろんこのBASEやSTORESの台頭という大きな機運にいち早く参入できたのは、何度も言及しているとおりいち早くWeb販売を強化し強みを持っていたことが大きいでしょう。

しかし、いくら機運を捉えてもすぐに失速してしまう企業がある中で、ダンボールワンが売上を伸ばし続けているのは、新興業界の競争戦略のセオリーに沿った戦略や戦術を組み立てられているからではないでしょうか。

今後、新興業界で戦う際の先行研究として、各企業によって参考になる事例といえます。

これからも、ダンボールワンの取り組みを見守りたいと思います。

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岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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