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話題のニュースを「スリーサークルモデル」で読み解く

2021年5月13日。日本経済新聞オンラインにて「シャルレ、社長に創業家の林氏を再起用 08年に一度解任」という記事を目にしました。シャルレは婦人用下着の訪問販売で有名です。記事によると、5月13日に創業者の長男である林勝哉氏を社長に起用する人事を内定したと発表したそうです。

林氏は、2007年に社長に就任した後、当時、動いていたMBOの手続きを巡って2008年に解任されました。記事によると林氏は2008年にMBOの実施を目指していましたが、株式の買い取り価格を巡って混乱が生じ、2008年12月に社長を解任されたとのこと。MBOも不成立に終わりました。

今回、近年の売上の不調を立て直すべく後継経営者として白羽の矢がたち、再登板になりました。6月23日開催の株主総会後の取締役会を経て社長に就任する予定とのことです。

さて、今回、記事の中にある創業家がシャルレの株式の4割を保有している点に注目し、「スリーサークルモデル」で考察したいと思います。

スリーサークルモデルとは、創業家とその一族によって所有、経営されるファミリービジネスにおいて、課題が生じやすい領域を概念的に示したモデルです。

具体的には、ファミリービジネスの課題の領域について「オーナーシップ」「ビジネス」「ファミリー」の3つの要素を使って説明します。

スリーサークルモデルでは、この3つの要素は円で表され、それらの円は互いに重なりあう形で示されます。

つまり、以下のように領域が7つに分類されます。

①「オーナーシップ」「ビジネス」「ファミリー」の全てが重複している領域
②「オーナーシップ」「ビジネス」が重複している領域
③「オーナーシップ」「ファミリー」が重複している領域
④「ビジネス」「ファミリー」が重複している領域
⑤「オーナーシップ」のみの領域
⑥「ビジネス」のみの領域
⑦「ファミリー」のみの領域

ここでいう「オーナーシップ」とは所有していること。つまり株式を持っている状態です。

「ビジネス」とは、経営に携わっている状態を意味します。
「ファミリー」とは、創業者一族であることを表します。

つまり上記の①~⑦は下記のように言い換えることができます。

①所有権を持ち家族である経営者・従業者
②所有権を持つ家族ではない経営者・従業員
③所有権を持つ経営者・従業員ではない家族
④所有権を持たない家族である経営者・従業者
⑤外部の投資家
⑥所有権を持たず家族でもない経営者・従業員
⑦所有権を持たず経営者・従業員でもない家族

スリーサークルモデルは、この領域のうち、①~④に該当する箇所で、ファミリービジネス特有の課題が生じやすいとしています。

創業者の長男である林氏は、①に該当すると言えます。シャルレに限らず、スリーサークルモデルによれば、課題が生じやすい領域といえます。

私見にはなりますが、スリーサークルモデルを逆説的にとるならば、創業家経営者であり、なおかつビジネスを円滑に進めるには、「オーナーシップ」「ビジネス」「ファミリー」の3つを担っていたとしても、それぞれ切り分けて意思決定する意識が必要ということではないでしょうか。

もちろん、それが難しいからこそ、スリーサークルモデルが成り立つのだと思います。

さて、まさにスリーサークルモデルの①領域で一度課題に直面した林次期社長。そのリトライは、多くの同族経営の会社にとって、多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。ぜひ、その取り組みに注目したいと思います。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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