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話題のニュースを「PEST分析:技術的環境(Technology)」から読み解く

今回は、2021年4月28日に、アメリカのアマゾン・ドット・コムが、アメリカ国内で働く50万人を超える従業員(インターネット通販の受注や配送、荷物の仕分けなどを担う人材が対象)について、50セントから3ドルにかけて時給アップを発表した件に関する考察の4回目です。

本ブログでは3回にわたり、なぜアマゾンは、この時期にこれほどの費用をかけて賃上げに踏み切ったのか。その背景について外部環境分析の代表的な手法の一つ、PEST分析で考察してきました。

今回は、最後の技術的環境(Technology)の観点から掘り下げて考えたいと思います。

Technologyは、研究開発、技術革新、新技術、特許、生産技術など外部環境に該当します。同業界の最新テクノロジーはもちろん、周辺業界やITなどどのような業界にも汎用性が高い技術革新にも目配りしておく必要があります。

アマゾンに関するTechnologyは多数考えられますが、やはりビジネスモデルを支えている物流センターに関わる部分のウエイトは大きいと考えます。

アマゾンが台頭した背景として、リアル店舗とは比べものにならないほど多彩な品揃えがあり、それが短期間で届けられる消費者側へのソリューション提供を達成したという点が大きいと考えます。

多彩な品ぞろえと短期間配送を可能にしているのが物流センターといっても過言ではありません。実際に巣ごもり需要が増えた昨年、日本でもアマゾンの物流拠点が増加しました。

今回の賃金アップの対象となったインターネット通販の受注や配送、荷物の仕分けなどを担う人材。まさに、この物流センターを支える人材です。

一方で、アマゾンのソリューションの核の一つといえる物流センターですが、増えたからよいというわけではありません。物流センターへの指示に対して、瞬時に対応し出荷をしていく仕組みがなければ、意味をなしません。また、拠点が増加するほど人件費、地代などの維持コストもかかるようになります。効率化とコスト削減を両立しなければ、アマゾンのソリューションは成り立たないでしょう。

その点を解決すべく導入されたアマゾンの物流センターの代名詞といえば、アマゾン・ロボティクスです。工場内の商品棚を自動的に従業員がいるところまで運んでくれる自走式のロボットで、2019年6月時点で、全世界で約20万台を導入していました。

この点から、物流センターに携わる人材は将来的に減少する傾向になるかもしれません。

2020年8月25日付けの日経新聞の記事「アマゾン、物流拠点を増強 東京・埼玉に4カ所新設」によると、今回の新型コロナウィルス感染症拡大で、日本のアマゾンでも、平常時より配達が遅れるケースが相次いだようです。また、一時的にではありますが、生活必需品の発送を優先させるため、娯楽品の入庫を制限する措置をとってもいたようです。

その点で、イレギュラーな対応の必要性に迫られたといえます。そのようなイレギュラー対応については、まだまだ人の力を借りる必要があります。パターン学習はAIの得意とするところですが、環境に対する解釈と意思決定は人の力の優位が続くでしょう。

一方で、インターネット技術の進展でB to Cのイーコマース市場はさらに拡大することが考えられます。よくコロナによって時代の進み方が変わったといわれますが、B to Cはイーコマースの進展についても同様ではないでしょうか。

経済産業省のデータから、2019年のBtoC物販系分野のEC化率は、7%弱といわれています。つまり、イーコマースによってアマゾンの取引が増えていく伸びしろがまだまだあるように思います。

アマゾンがこれをopportunity(機会)と捉えて、大きく進展していくならば、物流センターの増加が不可欠でしょう。そして、従来の方針どおり、なるべく効率化、コスト削減を念頭においてアマゾン・ロボティクスの導入も進んでいくでしょう。

その中で、今回のコロナが明らかにしたことは、やはりロボットだけではイレギュラー対応ができないということでしょう。現在のtechnologyであるAI、アマゾン・ロボティクスなどの進展を鑑みると、まだまだ人の果たす役割が大きいと判断したのではないでしょうか。

B to CのEC化率が高まれば高まるほど、これまで以上に、システムトラブルや配送トラブルがおこる可能性は高まります。また、EC化率が高まるほど消費者にとってのアマゾンの位置づけが上昇します。そうなれば、トラブルに対する態度もより厳しくなることが予想できます。

そう考えると、これからの成長段階において、物流センターで業務に携わる人材の役割はより大きくなるのかもしれません。

あくまでも仮説ですが、上記のような見通しがあり、ここでより良い人材にやりがいをもって物流センターで働いてもらえる環境の整備を重要視しているのではないでしょうか。

Technologyについては市場化しなければオープンにならないことが多く、アマゾンについても現在、さまざまなtechnology開発が進んでいるようです。現在の物流センターのtechnologyについて上記のとおり考察すると、この時点で給与アップを図ったアマゾンの取り組みは理にかなっているように思えます。

今回も含めて全4回で、アマゾンがアメリカ国内で働く50万人を超える従業員(インターネット通販の受注や配送、荷物の仕分けなどを担う人材が対象)について、50セントから3ドルにかけて時給アップを発表した件を、マクロ環境を捉えるフレームワークであるPEST分析で考察してきました。

PEST分析は、業種業界に関係なく、どのような企業や事業についても戦略を立案する上で必須のプロセスです。皆さんも、ご自身の会社について今後どのように対応するか、PEST分析を使って再計画やトレースしてみてはいかでしょうか。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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