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話題のニュースを「製品の4つの価値」から読み解く

ビール系飲料の売上が不調という記事が掲載されていました。1月は前年同月比で20%減少とのことです。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で新年会がなくなったり、時短営業する飲食店が増加したことで出荷量が大幅に減少しました。

ビール系飲料とは、一般的にビール、発泡酒、第3のビールをさしますが、ジャンル別に見るとさらに傾向が顕著に見えてきます。2021年1月期は ビールは41%減、一方で発泡酒が12%増、第三のビールは6%減だったそうです。記事では、メーカー別の減少幅も取り上げていますが、概ねビールが大幅減なのに対し、発泡酒は堅調に推移しているようです。

発泡酒は発売当初、品質面で様々な意見がありましたが、リリースから年数が経ち製品革新が終わり、品質が安定したように思います。価格は従来通り安く抑えたままで、品質は高まってきていると考えて良いでしょう。ビールよりも価格が安い発泡酒の品質が高まったとすれば、発泡酒需要が高まるのは道理であり、ビールが売上を減らしているのはごく自然のことといえます。

しかし、これまでは価格が安い発泡酒の品質が上がっても、ビールの減少幅は比較的大きなものになっていませんでした。しかし新型コロナウイルス感染症拡大においては、この1月が前年同月比41%減、昨年の5月は40%減少と大幅な減少が何度か見られています。

ここで2つの疑問がわきます。

①なぜビールはこれまで、発泡酒の品質が高まってきたにも関わらず、大幅な減少を免れてきたのか。
②今回は、なぜ大幅な減少につながったのか。

この2つの疑問について、今回は製品の4つの価値の概念を使って整理をしてみたいと思います。

製品とは、ニーズやウォンツを満たす目的で市場に提供され、注目・獲得・使用・
消費の対象となるすべてのものを指します。製品が有する価値は4 つに分類することができ、最下位概念である基本価値から段階的に発展していきます。

4つの価値とは、具体的には「基本価値」「便宜価値」「感覚価値」「観念価値」を指します。

基本価値とは、製品が属する製品カテゴリーに存在するために必要な価値です。ビールの場合であれば麦から作られた炭酸のアルコール飲料などが該当しそうです。

便宜価値とは、製品の購買や仕様などにおける利便性をに関する価値です。缶の持ちやすさや飲み口の開けやすさ、一缶あたりの容量など、多くのものがこれに該当するでしょう。

そして感覚価値は、消費者に楽しさを与える価値や、五感に訴求する価値です。ビールに入れた時の泡の見栄えの感じや、のどごしの感覚などがこの価値に該当するといってもいいかもしれません。

最後が観念価値です。これは品質や機能以外に製品が持つ意味やストーリーにより生み出される価値ということになります。

これまでビールの売り上げが大幅に減少してこなかったのは、ビールが圧倒的に観念価値を有していたからではないでしょうか。ビールのテレビコマーシャルを見ればその一端を垣間見ることができます。屋外でオフタイムにリラックスしているシーンで飲んでいる姿、仕事帰りに自宅で楽しむ姿、居酒屋やレストランでみんなとワイワイ楽しむ姿などが、かなりの確率で展開されるのではないでしょう。

これをより平易に表現すると、ビールには観念価値として下記の3つが潜んでいるように思います。

①リラックスしている時に屋外で楽しむ
②仕事を一生懸命やった後に自分を切り替えるために楽しむ
③仲間と一緒に楽しむ

一方で、今回はなぜ大幅に減少につながったのでしょうか。それは、新型コロナウィルス感染症拡大に、これらのビールがもつ観念価値を無効化する要因が多く潜んでいたからではないでしょうか。今回の新型コロナウイルス感染症拡大では、外出そのものを自粛しているため人々は、屋外で楽しんだり、仲間と楽しんだりという文脈での楽しみ方が出来なくなってしまいました。つまり、前述の①と③の価値が無効化されます。

一方で、仕事終わりに家で楽しむという文脈は生きているように思います。ただしあくまでも私見になりますが、仕事帰りに楽しむというのは家の外で仕事という形で取り組んで帰宅をし、そこでリセットボタンを押すようにプライベートモードになるためのツールとしての意味合いが大きいのではないでしょうか。現在のように自宅でリモートをで働いている人にとってリセットツールであるビールが、それほど魅力的ではないのかもしれません。したがって、②の価値も希釈化されそうです。

まとめると、これまでビールの売り上げ減少幅が小さかったのは、まさに関連価値に大きな魅力があったためだと考えられます。一方で、今回の新型コロナウイルスによってビールが持つこの観念価値を無効化する要素が揃っていたということではないでしょうか。

結果的に、ビールは発泡酒と比べて大幅な減少を余儀なくされたように思います。ビール業界にとっては、これまでにない異例の事態でしょう。今後、ビールの持つ観念価値が時代とともにどのように変化していくのかに注目をしていきたいと思います。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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