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話題のニュースを「マーケティングのニーズとウォンツ」から読み解く

花王が2020年の秋に発売した商品が、2021年4月8日付けの日経新聞で取り上げられています。白髪染めの「ブローネ ルミエスト」です。大きな特徴は AR。拡張現実によって、実際に染めなくても自分の髪色を確認することができることです。記事によると、本商品が現在の消費者の潜在的な課題の解決に繋がるそうです。

新型コロナウイルス感染症拡大によって外出自粛が続く中、美容院に行くのが面倒という女性消費者が増えており、本商品の購入体験がその課題解決になりそうだとのことです。美容院に行くのが面倒、だけど白髪が気になるという消費者にとって、家にいながら自分の髪の色味を確認しイメージに合ったカラーを選べる本商品が、マッチしそうです。

このブローネ ルミエストの事例から、マーケティングにおけるニーズとウォンツを明確に分けて捉える必要性を改めて感じました。

ニーズという言葉は比較的広い意味で使われているように思います。マーケティング論の基本書ではニーズが本質的な欲求、ウォンツか表層的な欲求と分類されています。またニーズは目的であり、ウォンツは手段とされている書籍もあります。基本知識的には、商品やサービスはウォンツと分類され、その商品やサービスを購入する背景にある目的や問題意識などがニーズとされることが多いようです。

マーケティングでは1/4ドリルの例えが有名です。ドリルが売れるのは消費者がドリルを欲しいからではなく、ドリルによって開く1/4の穴が欲しいからであるというものです。商品であるドリルはあくまでもウォンツとなります。

今回の花王のブローネ ルミエストは、図らずもニーズをとらえた商品と言えます。

人々は、AR(拡張現実)によって、カラーが試せる白髪染めが欲しいのではなく、その背景にある手軽さや便利さ、ドラッグストアや病院に行かなくても髪色のイメージギャップがなくせるという利点を購入しています。消費者のニーズが多様化している現在、ヒット商品を生み出すのは至難の技です。また花王にとって、ブローネ ルミエストが美容院が面倒という課題を解決する商品になった点は、記事によるとバイプロダクトのようです。

しかし、改めて消費者の視点に立って、現在のニーズを探索しながらマーケティングを行なっていく大切さが、図らずも浮き彫りになった事例と言えるのではないでしょうか。もちろん、製品やサービスに焦点を当てて魅力を高めていくことが重要です。しかしそこに懸命になりすぎて、ウォンツしか見えなくなると、いわゆるマーケティングマイオピア(マーケティング近視眼)に陥ってしまいます。

単純なことですが、ニーズにウォンツも包含した形で捉えるのではなくて、あくまでもニーズとウォンツを切り分けて捉えることを認知していれば、マーケティングマイオピアに落ちる確率を減らせると思います。

花王が今後どのような潜在的なニーズに応えていくのかに、注目したいと思います。

 

 

 


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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