話題のニュースを「公式組織の3要素」の視点で読み解く
2021年10月29日の日本経済新聞に、学習塾を運営する長野県松本市のシナジアという会社が、11月にデジタル技術と教室での指導を融合した学習塾を開くと紹介されていました。
記事によると生徒はスマートフォンやパソコンなどで勉強を進めながら、週に一度、講師による個別指導を受けるとのことです。この方式の狙いは、生徒一人一人の習熟度によって学習内容を適宜、調整できる仕組みを取り入れながら、生徒に新しい学び方を提案することにあるそうです。
講師の役割は個別指導のほか、オンライン上で面談を毎週実施すること。つまり、生徒の習熟度や生活のリズムに合わせた勉強を促進することが求められます。
個々の環境や能力に合わせた学習をしていこうという流れは、これからも大きくなることが予測されます。
その時に、講師側の生産性を高めることも、企業の課題といえます。おそらく、これまでとは違う役割や成果を求められることもある講師陣。彼らに対して、組織として成果を高めていくためにはどのような視点が必要でしょうか?
今回は、C.バーナードが提唱した公式組織の3要素に当てはめて考察を深めたいと思います。
バーナードによると、組織には必ず3つの要素が必要とのことです。
1つ目は「貢献意欲」です。文字通り、組織は構成するメンバーが、「この組織に対し活動を提供しよう」という意欲を持っていなければ成立しない、ということです。
2つ目は「共通目的」です。組織というのは本来、個人では達成できないことを協働で達成しようと作られるものであるため、組織の構成員が共通の目的を持っていることが不可欠といわれます。
3つ目は「コミュニケーション」です。これは、いくら、前述の「貢献意欲」や「共通目的」があったとしても、その両者を結びつけるためのコミュニケーションが生じなければ、組織としてまとまった力を呼び起こすことはできないとうことです。
記事にはシナジアの組織面について言及する記載はありませんが、新しいことを始める時には組織の中に混乱や抵抗や対立が生まれることが想定されます。また、シナジアの今回の取り組みは、生徒一人ひとりに目を向けようというものであり、社内外に関わらず、講師陣がチームとして機能しなければ、成し遂げることができないものではないでしょうか。
シナジアがどのように講師陣の生産性を高めていくのか。その点にも着目しながら、取り組みを見ていきたいと思います。
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岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)
経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。