話題のニュースを「ターゲットマーケティング」から読み解く
2021年9月4日の日経mj のオンライン記事を興味深く拝読しました。記事のタイトルは食品各社大人目線を捨て Z 世代の共感得たいというものです。
Z 世代についてはメディア各社の定義を見てみると若干の揺らぎはあるようですが1996年から2015年の間に生まれた世代を指すようです。
一般的な Z 世代の特徴として挙げられるのがスマホネイティブ SNS ネイティブということです。
物心ついた頃から SNS やスマートフォンが普及しており、それらのツールを使って情報を収集したりコミュニケーションを取ったりしているというのが特徴です。
裏を返すとテレビや新聞、雑誌、ラジオなどのいわゆる4大マスメディアとは距離を置いており、それらの影響を受けにくい世代と言うことになります。
一方で SNS や YouTube などのインフルエンサーの影響を受けやすく、価値観が多様化しておりマイペースに消費するというのが購買傾向として挙げられるようです。
さて記事によると味の素は Z 世代に向けた商品やサービスを開発するための専門部署を立ち上げました。また伊藤園は急須でお茶を飲む体験を提供するそうです。
ではなぜ Z 世代に向けて各社が特別な取り組みをする必要があるのでしょうか。
今回はその点についてターゲットマーケティングの視点から考察してみたいと思います。
現代のマーケティングでは、マスマーケティングではなくターゲットマーケティングが主流なことは周知な事実といえるでしょう。
マスマーケティングは、市場全てを同一のものと捉え、一つのマーケティング・ミックスのみを展開することです。
一方、ターゲット・マーケティングでは、市場にはさまざまなニーズをもった顧客群が存在するため、それらを区別して考え、その顧客群のいくつかを選択して、それぞれの顧客群のニーズにあった製品とマーケティング・ミックスを開発することです。
まさに、今回のZ世代に向けた取り組みがそれです。
そこでポイントになるのが、Z世代のニーズです。Z世代のニーズを読み解く鍵となるのが、リキッド消費という考え方です。
リキッド消費とは、デジタル化の進展によって変化している消費の傾向を説明する概念です。リキッド消費には3つの特徴があると言われています。それが①短命(ephemeral),②アクセスベース(access based),③脱物質的(dematerialized)です。
①短命性
一つの商品やサービスに対するニーズが短くなっていると言われています。ヒット商品があっという間に忘れ去られてしまうことは身の回りでもあるのではないでしょうか。
②アクセスベース
所有権が移転しないサービスが増えています。コロナになって、動画や音楽のサブスクリプションサービスの利用頻度が増えたという方も多いのではないでしょうか。
③脱物質的
同じ水準の機能でも、物質をより少なくしたり、まったく使用しなくなったりするようになっています。CDが音楽配信に代わったり、電子書籍が増えたりしていることが挙げられます。
Z世代はデジタルネイティブであり、まさにリキッド消費世代といえるでしょう。
現在、メーカーのマーケティングの担い手は、企業の状況によるところもあるかもしれませんが、従来の長期的に物を所有し、物を利用するソリッド消費世代が多いのではないでしょうか。
消費スタイルのパラダイムが大きく変わったZ世代に対しては、より丁寧にターゲットマーケティングを実践していく必要があると言えそうです。
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岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)
経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。