【ローソン】マチの本屋さんスタート。なぜ今、書店との併設店舗を出店するのか?

話題のニュースを「競争地位別戦略とターゲットマーケティング」から読み解く

2021年5月31日付けの日経新聞のオンライン上で、ローソンが書店を併設した新ブランドの店舗である「LAWSONマチの本屋さん」を展開すると発表したことが取り上げられていました。記事によると、1号店は埼玉県狭山市の店舗。売り場面積は約280平方メートルでそのうち書店の部分を70平方メートルとするそうです。約9000タイトルの書籍や雑誌を展開し24時間営業で FC 展開をするとのこと。

このローソンの新たな取り組みについて、その理由と展望を競争地位別戦略とターゲットマーケティングの観点から考えてみたいと思います。

Amazon が全盛の今、ローソンがあえて書店との併設店舗を新規出店するのか。時代に逆行しているようにも見えます。それでもローソンが取り組む理由を戦略論の知識で確認するならば、競争地位別戦略のチャレンジャーの戦略をとっていると言えるのではないでしょうか。

競争地位別戦略とは、特定の業界の中で企業をリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーに分類し、それぞれの戦略定石に基づいて戦略の方向性やマーケティングプランを検討していく考え方です。

国内コンビニ業界を見るとリーダー企業としてセブンイレブン、チャレンジャー企業としてローソンやファミリーマートがあげられます。

チャレンジャー企業の戦略定石はリーダー企業との差別化です。リーダーが実行していないことに着手をして、そこでリーダーとの差異化を図ります。

一見時代に逆行するような今回のローソンの取り組みも、チャレンジャーの戦略定石のテストの一つと考えると、戦略上の妥当性が見えてきます。

ただしチャレンジャーの戦略を取ることと、実際に取った戦略がうまくいくかどうかは当然ですが別問題です。

この書店と併設したコンビニ店舗の展望はどのようになるでしょうか。

この点については、マーケティング論では基本中の基本になりますが、やはりターゲットマーケティングの徹底がカギを握ると思います。

ポイントは、1号店が埼玉県狭山市であり、24時間営業をするという点でしょう。

感覚的にはなりますが、大きな流れとしてはやはり若者は紙媒体離れが進んでおり、また紙媒体を購入するにも Amazon を始めとした E コマースでの購買が増えてきているように思います。

一方で書店の醍醐味といえば紙媒体を色々と立ち読みをしながら比較し、じっくりと購入できる点にあるのではないでしょうか。

上記のことから、今回の取り組みから推測されるターゲット顧客はシニア層でしょう。

ターゲットマーケティングの原則は、ターゲット顧客に合わせてマーケティング施策の整合性を図ることです。

この理論上は、書店が併設されているという点でシニア層がターゲットとなるならば、コンビニ機能の品揃えもそれに合わせたものにすることが求められると言えるでしょう。

近年、リーダー企業であるセブンイレブンを始めかつての若者向け一辺倒の店舗からシニア層を意識した店作りへと変化してきています。

その点でシニア層向けの品揃えにシフトすることは決して不可能ではありません。

もちろん書店は書店、コンビニはコンビニと切り分ける考え方もあると思います。ただし、現在、衰退傾向にある書店を展開する以上、コンビニとの相乗効果を図ることができなければ、リーダー企業への有効な差別化策にはならないでしょう。

いずれにせよ、このローソンの新しい取り組みを期待を込めて、見守りたいと思います。

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岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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