【ミキハウス】各地の産院と提携。新たな流通チャネルを開拓する理由

話題のニュースを「流通チャネル戦略」から読み解く

2021年4月6日付けの日経オンラインの記事で、ミキハウスが各地の有力な産院と提携することが取り上げられていました。ミキハウスの既存チャネルは、6割が百貨店の店頭販売とのこと。各地で百貨店が苦境にある中、ミキハウスにとって新たな流通チャネル開拓は急務と言えます。百貨店に変わって、各地のショッピングセンターを流通チャネルとして開拓する選択肢もあると記事でも取り上げていますが、経営陣は消極的とのことです。

そのような中、今回の取り組みは、産後のお客様に対し乳児のお世話の仕方をレクチャーするとともに、乳児用品や乳児の医療品を紹介するという取り組みです。購入希望があれば、近くの店舗を案内するオペレーションなので、外商という位置づけなります。しかし、おそらく経営陣は、今後ミキハウスがダイレクトに消費者に販売をするダイレクトマーケティングも視野に入れているのではないでしょうか。

今回は、ミキハウスの取り組みを流通チャネル戦略の領域である「延期の理論」と「投機の理論」で紐解いてみます。

流通チャネルにおける延期の理論とは、端的に言うと、最終商品が完成するタイミングをなるべく消費者の利用場面に近づけるというものです。

投機の理論とは、逆に最終商品が完成するタイミングを流通チャネルの川上に持ってくるというものです。

前者には市場の変化に対応しやすいというメリットがある反面、生産の効率性が追求しにくいというデメリットがあります。

後者には、見込み生産で生産の効率を高めやすいというメリットがある反面、市場の変化に柔軟に対応できないというデメリットがあります。

現在の主流は、言うまでもなく前者です。消費者ニーズが多様化しており、短サイクル化しているため、柔軟に変化に対応できる仕組みが企業に求められています。

例えば、あるプリンターのインクメーカーは、ヨーロッパで販売するインクを全て日本で製造していた状態から、インクのハード部分は日本で製造し、どのような色を充填するかはヨーロッパの工場に移管しました。これまでは、日本でカラーまで決めて出荷していたのに対し、ヨーロッパの売れ行きを見てから近くの工場で充填するため、非常に柔軟に対応しやすくなりました。もちろん、工場2ヶ所で生産を分けるため管理コストは増加します。一方で、市場動向に合わせた品揃えが可能になるため、商品在庫日数が短くなり、売れ残りなども減少します。長期的に見るとプラス面の方が大きいと判断したようです。

アパレル業界は、従来そのシーズンごとに見込み生産を行い、「プロパー」→「クリアランスセール」→「福袋」などの方法で売り尽くすというビジネスモデルを取ってきました。これはまさに投機の理論と言えます。一方で、アパレルで現在堅調に推移している SPA 企業は、まさに市場動向を見てから商品を投入できるように短サイクルのチャネルを備え、延期の理論を取り入れていると言えます。

ミキハウスの外商がいずれ、単に商品を紹介するだけではなく、顧客のニーズを汲み取った上で商品開発などに情報を反映できるようになり、かつそのニーズに合った製品を迅速に設計、生産する体制が整うならば、さらなる飛躍が期待できるのではないでしょうか。延期の理論に基づく流通チャネルの構築に、注目をしたいと思います。


岩瀬敦智(Iwase Atsutomo)

経営コンサルタント。株式会社コンセライズ代表取締役。企業の価値を整理し、社内外にPRするコンサルティングを専門としている。特に中核人材に企業固有の価値と、経営理論を伝えることでリーダー人材の視座を高める講演や研修に定評がある。主著として、「MBAエッセンシャルズ(第3版)」共著(東洋経済新報社)、「マーケティング・リサーチ」共著(同文舘出版)など。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科(MBAスクール)兼任講師。

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